金属アレルギーについて
一般的な金属アレルギーは、ピアス・ネックレス・メガネフレーム・ベルトのバックルなどの金属に触れている部分が赤く腫れたり、痒くなったりするアレルギー性接触皮膚炎です。
しかしながら、歯科金属アレルギーでは、金属に接触している歯肉や口腔粘膜に症状が起こる事は、2.1%ときわめて稀で、その多くは口腔から離れた遠隔の皮膚に起こる全身性接触皮膚炎です。つまり、口腔内で溶けた金属が口腔粘膜や消化管から吸収され、血行性に全身に運ばれ、到達した部位で皮膚アレルギーを起こします。
溶けた金属イオンによる歯肉や歯質の変色は、臨床ではしばしば目にされます。
金属アレルギーは遅延型の細胞性免疫反応である。その発症に関しては、上皮を通り抜けた金属イオン(不完全抗原)が何らかののタンパク質と結合して完全抗原となり、マクロファージやTリンパ球に抗原提示が行われることによって起こる事がわかっているが、どのような場合にそれが起こるのかは解明されていません。
歯科金属アレルギーの診断は、パッチテストおよびリンパ球幼若化試験により行われますが、必ずしも診断精度は高くなく、アレルゲンとして疑われる金属を除去した後に、症状の改善が認められるのは約半数と言われています。これはすでにアレルゲン化した金属抗原が広く全身に存在しているためと考えられています。
一般的にアレルギーを起こしやすい金属には、ニッケル、コバルト、パラジウム、水銀などがあり、金やプラチナなどの貴金属はアレルギーを起こしにくいとされていますが、歯科で多用されている、金・パラジウム・銅・亜鉛などがアレルギーの原因金属として頻度高く指摘されています。保険の金属の主成分となっているパラジウムは、原子構造がニッケルと似ており、交差反応性の報告もあります。また、アレルギーがないとされてきたチタンにも報告されるようになってきており、チタンに変わるジルコニアインプラントも開発されてきています。
歯科金属アレルギーで引き起こされる疾患・症状には主に次の6つがあげられます。
1)アトピー性皮膚炎
かゆみを伴う湿疹が全身または部分的に発生する病気です。アレルギー性の体質、皮膚のバリア機能の低下などさまざまな原因が組み合わさって起こります。
2)掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
手掌や足底に白い小膿疱(膿をもった水疱)がみられる病気です。
3)湿疹
皮膚に起こる炎症のことで、皮膚炎とも言います。
4)乾癬
皮膚の表面が炎症を起こすことで生じる慢性の角化性病変のことです。
5)にきび(尋常性座瘡・じんじょうせいざそう)
6)口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)