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歯内歯の根管治療とCT

歯内歯とは、歯冠部の象牙質の一部が表層のエナメル質とともに歯髄腔内に深く陥入した形態異常歯のことで、英語で"dens in dente"といわれる。発生学的に、内エナメル上皮の一部が歯乳頭内に深く侵入・増殖したことにより生じたものと考えられ、歯髄腔内に歯質の陥入が見られ、この構造は外側に象牙質、内側にエナメル質と、本来の組織構造とは逆になっている。 出現部位は上顎側切歯に多いが、どの歯種にも認められる。出現率は報告者や歯種によりまちまちではあるが、0.04~10%と報告されている。

歯内歯 は歯髄腔内への歯質の陥入で あり、発育中の陥入歯質は外側歯質と逆の方向から血液の供給を受けているが、歯の萌出とともに血液の 供給がなくなり、壊死する。また、外側の本来の歯の歯髄も陥入歯質により圧迫されて狭小化するために、循環障害や歯髄壊死を起こしやすい。歯内歯の陥入部感染は一般的に無症状に進行し、X線検査で根尖性歯周炎像が偶然発見されることもあり、なおかつ患歯が生活反応を示す場合もあるので、診断の際に混乱をきたしやすい。

 

症例

患者は14歳女性。かかりつけ医での検診時に、左下1番にレントゲンで偶然根尖病変が発見された(上画像)が、生活歯髄反応があったため、経過観察していた。最近になって病巣が拡大してきたため、紹介先の大学病院で、病巣摘出手術を受けることになり、先立って根管治療を行うことを依頼されたため、来院した。初診時の口腔内写真を下記に示す。

通常のレントゲン写真では、歯内歯と歯髄の位置関係がわからないため、CTを撮影することにした。

CTでみると、歯髄腔の中央に歯内歯が認められ、同心円状に中央から壊死組織、歯内歯エナメル質、歯内歯象牙質、歯髄組織と構成されていることがわかりました。

根管充填後のレントゲン写真。根尖付近に一層象牙質が残っていたため、そこまでを無菌的に清掃を行った後、MTAにて根尖部を閉鎖、上部をガッタパーチャにて充填処置を行いました。