この記事の著者・監修者
院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
資格・所属学会
- 日本矯正歯科学会認定医
- 歯学博士
- 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
- NCC認定カウンセラー
- 日本矯正歯科学会
- 日本歯周病学会
- アメリカ歯周病学会
よく質問を受ける、根管治療後の痛みの原因についてまとめてみたいと思います。
治療している歯ではなく、隣の歯や上もしくは下の歯が原因となっていることがあります。
痛みとは神経を介して脳が感じている現象(痛みについての基礎知識)なので、原因が他の部位にあることが極まれにあります。
そのため原因歯の特定には、詳しいそれまでの既往歴に加えて、さまざまな診査結果を考慮して総合的に行うことが大切です。
非定型性歯痛や心因性歯痛、関連痛、急性上顎洞炎(痛みについての基礎知識)による場合は、歯の治療では痛みが止まりません。
上の図は感染根尖性歯周炎の状態を模式図に表したものです。根管内の細菌や細菌の毒素が根尖孔から歯槽骨内に広がり根尖病変を作った状況を示しています。根管治療では、この根尖孔より上の根管内を消毒清掃することで感染している細菌の除去を行います。
この際にリーマーやファイルという器具を使う訳ですが、根管の長さよりも深く入れてしまうと、根尖孔の外に針が押し出されることになります。これを過度に行うと、場合によっては根尖孔を破壊してしまい、予後が悪くなります。
初回の治療で根尖孔を越えて過度にリーマーを入れると、上図のような様々な感染物を押し出すことになり、急性の根尖性歯周炎をおこし、痛みがひどくなることがあります。焦らずに根管長をきちんと計測して行うことが大切です。
※図はいずれもReit先生たちの書かれた「Textbook of Endodontology」より引用。
先の根管長を越えてリーマー、ファイルを挿入したのと逆に、根尖孔よりアンダーな挿入状態では歯髄組織の取り残しが起こり、痛みが残ります。
根管が複数存在していて、見落としがあると痛みが残りますが、マイクロスコープにより根管内を仔細に観察することで防ぐことが出来ます。
咬合痛が症状としてある場合は、炎症が根の周りに及んでいることが考えられます。この場合は、根管治療だけでは炎症を抑えることが出来ず、抗生物質や鎮痛剤の投与が必要となります。薬による消炎効果は最低2~3日かかるため、その間は鎮痛剤で除痛を試みます。
急性根尖性歯周炎は周囲が硬い骨で囲まれているため、通常の炎症よりも痛みが重篤であり、歯の挺出も起こるため噛めなくなります。
場合によっては咬合調整を行う必要があります。
歯周ポケットもなく、マイクロスコープでも見つからない初期の歯根破折が存在することがあります。
症状としては咬合痛や打診痛のみで、それ以外は痛みはありません。破折の場合は時間の経過とともに明らかになります。
感染のコントロールなしに治療を行ったため症状が改善せず、FC、ペリオドンなどの細胞障害性の強い薬剤を長期にわたって使い続けた結果起こります。
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
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