マイクロスコープと根管治療


根管治療で悩まれている方へ


根管治療がなかなかうまく行かず、何ヶ月もの間、痛みや違和感で困って当院へ来院される患者さんが多くいらっしゃいます。もう抜歯しかないと言われて、わらをもすがる思いでいらっしゃる患者さんもいます。

そのような患者さんを拝見すると、そのほとんどがラバーダムを使わずに、薬で治そうとしているのです。つまり、感染のコントロールをきちんとしていない状態で強い薬を過度に使って、生体組織をかえって痛めつけて痛みを引き起こしているのです。

根管治療の基本は、根管内の感染の除去です。その感染源はお口の中にいる細菌なのですから、根管治療中に細菌を持ち込まないように防御することがいちばん重要です。ラバーダムをせずに治療のたびに感染を起こして、それを薬で消毒するというのは本末転倒です。

ラバーダムで感染のコントロールをして、体に治す力を起こさせるようなマイルドな根管貼薬剤を2~3週間使用すれば、多くの場合症状は改善していきます。

通常私のところでは、根管治療は特別な問題がない限り、2~3回の通院で終わります。治療が長引けば感染の機会が増えるため、得策ではありません。

また、マイクロスコープは有効な器具ですが、感染のコントロールがきちんとできなければ治すことは出来ません。

私はこのような根管治療の基本をスウェーデンのイエテボリ大学歯内療法科の専門医の先生方に教えていただきました。治療において何が一番大切なのかを気づかせていただいたのです。その知識は、先人の膨大な臨床基礎研究の積み重ねから得られたものです。

私はその正しさを日々の臨床で実感しています。どうかそのような治療をしていただける先生を捜してください。一人でも多くの患者さんが、ラバーダムをして安全な根管治療が受けられるようになることを願っています。


人工歯根に使われるチタンは、骨と直接結合する性質があります。そのためインプラントは自分の体の一部のようになり、物を噛んだときの感覚も顎の骨に直接伝わりしっかり噛むことができます。酸化チタンという性質上、アレルギーの心配もほとんどありません。

[重要]とかじ歯科で根管治療を受けた患者さんへ


1. 根管治療を行った後、一時的に痛みが出ることがあります。これは根管治療によって根尖部の病巣が刺激されて一時的に炎症が強まるために起こります。根管内にいれてある消毒薬により炎症は徐々に落ち着きますので、通常は3~4日、病巣の炎症が強い場合でも6日ほどで落ち着く場合がほとんどです。腫れや痛みが徐々にひどくなる場合はご連絡ください。

2. 食事をしていくうちに仮詰めの部分が削れて穴が開いたようになることがありますが、詰め物は深く入っていますので、仮歯が壊れたりしなければ心配ありません。もし仮歯が壊れた時はすぐに連絡をしてください。

3. 根管治療中は歯の強度が低下しているため、そこで堅いものを噛んだり、くいしばったりするのは極力避けてください。

4. 抗生物質を服用するように出ている患者さんは、腫れや痛みが治まっても最後まで薬を飲んでください。

5. 炎症がある場合は夜更かしや過労を避け、体調管理に気を配ってください。風邪をひいたりすると悪化することがあります。飲酒も控えてください。

歯の神経、および根の治療


ラバーダムとマイクロスコープ(顕微鏡)を使って治療を進めます

歯の神経の治療で最も大切なのは、内部に侵入した細菌の除去です。その時に必ず必要になるのが、ラバーダムというゴムのマスクです。

これは、細菌の巣であるお口の中から治療している歯を隔離して、治療中に新たな細菌が中に入らないようにするためのものです。

根管内は体の中で唯一、免疫機能が十分に働かない場所なのです。

それは、免疫細胞であるマクロファージや白血球といった細胞たちの供給経路である血管の入出経路が、根尖に限定されていることが大きな理由です。

そのため、ほんのわずかな量の細菌が残存もしくは進入しただけで根の先に炎症が起こってしまいます。

お口の中はバイ菌の住み家です。

ラバーダムをしないで根管治療をすることは、手術を手術室ではなくゴミ置き場でするようなものだと思ってください。

ラバーダムを行って治療した場合とそうでない場合とでは、治療成績が10倍違うことがわかっています。

もちろん器具も毎回滅菌したものを使用しています。

また、根の内部という見えないところを治療していきますので、マイクロスコープ(顕微鏡)を使って治療していきます。

これを用いることで、今までは見逃していた神経の管や根の奥の汚れ、問題点なども新たに見つけることが出来るようになり、治療の成績が向上します。1回の治療時間はおよそ1時間です。

上の写真は根の治療に使う機材です。

ひとりひとりこのような滅菌をしたパッケージを使い、バイ菌が感染するのを防いでいます。

ラバーダムと根管治療


根管治療にラバーダムは必要か否かで色々と議論があるようですが、私は根管治療でもっとも大切なものがラバーダムだと考えています。確かにラバーダムをしなくても、簡易防湿などの配慮をすれば、根管治療によって問題を起こすことはそう多くはないでしょう。かくいう私もイエテボリで学ぶまでは、ラバーダムを使用していませんでした。

ラバーダムの見解が異なるのは、各医療者によって治療のやり方に違いがあることと、治療結果の評価基準が異なるからです。病変がきちんと治ってはじめて成功とするのか、痛みなどの臨床症状が無ければ成功とするのか、どれくらい経過を見ているのかによって評価は異なります。

ラバーダムを全てのケースに行なうようになって、それによって起きた変化に驚いたのは他ならぬ自分自身でした。ラバーダムによって起きた変化をまとめてみると、以下のようになります。

1. 根管治療後の痛みの出現の減少


以前は根管治療後に痛みが出ることが時々ありましたが、それが少なくなり、出ても軽度なものとなりました。

2. 根管治療の予後の安定性の向上と難治症例の減少


以前よりも難しい根管治療の患者さんが来られているにも関わらず、治療後に痛みが出たり、数年後に再治療となるケースが大きく減少しました。

3. 根管治療の治療期間の短縮


臨床症状がなかなかおさまらず、根管治療に何回もかかるケースがなくなりました。

4. 原因究明率の向上


ラバーダムをきちんとすることによって、感染を疑う必要がなくなり、結果的にそれ以外の要因をである咬合や破折の問題を発見しやすくなりました。

根管治療で症状が改善しないケースはほとんどなくなり、治療中に痛みが出るケースも以前に比べると10分の1くらいに減りました。これが私の臨床実感です。

根管治療後の歯を長持ちさせるためには


根管治療になった歯の多くは、大きな修復物であったり、虫歯が広範囲に広がっていて、最終的に詰め物や被せものといった補綴物を入れなくてはならない場合が多いです。

特に奥歯の場合は、硬いものを噛むという役目や、かみ合わせの位置を決めるという大事な役目がありますから、強い力がかかっても壊れないような構造物であることが必要です。特に神経を失った歯は歯根破折を起こしやすくなるため、被せものにしたほうが、金属や樹脂で穴を埋めるといった詰め物で済ます方法よりは安全です。歯を削って被せものにすると、虫歯になりやすくなって寿命が減ると思われている方が多いですが、それは補綴物の質によります。顕微鏡でぴったり適合した被せものを作ると、お手入れがしやすく長持ちするものが出来上がります。

米国インディアナ大学の研究によると根管治療を受けた歯の平均生存年数は約11年であり、そのうち、根管治療後すぐに被せものを装着した歯の平均生存年数は約20年であったという結果が出ています。

根管治療中に治療を中断したり、しばらく補綴をしないでいると、歯の寿命を縮めてしまう結果に繋がります。虫歯になりにくい適合の良い補綴物を入れて、日々のお手入れをしていただき、定期的に検診でチェックを受けていただくことが、長持ちさせる秘訣です。

根管治療 ーその1ー 抜髄


Step.1

右上の奥歯に痛みを訴えて来院された患者さんで、レントゲン写真で上の大臼歯の間に大きな虫歯が認められました。

口腔内を見ると詰め物の後ろ側の歯が欠けて穴があいています。

Step.2

麻酔をしてから詰め物をはずします。中の方まで虫歯で空洞が出来ており、歯茎が増殖して穴の中を覆っています。

Step.3

増殖した歯肉を取り除き、虫歯の部分を完全に取り除いた写真です。

中央部分に神経の一部が赤く見えています。


Step.4

根の治療にあたり、外から細菌が入らないように隔壁をレジンにて作ります。

Step.5

土台の形に仕上げ、上に仮歯を入れて、歯の形を復元しました。

Step.6

ラバーダムというゴムのマスクをつけて、口の中の細菌が入らないようにした上で、仮歯に穴を開けていきます。

神経組織が見えてきました。

Step.7

根の入り口を確認します。

Step.8

通常この大臼歯の根の数は3本ですが、うち1本の根には神経の管が2本みつかりました。顕微鏡で拡大してみることによって、神経の管の見落としを防ぐことが出来ます。

Step.9

感染した神経組織を除去した後に根管内を消毒します。

Step.10

最後に殺菌のお薬を入れてこの日の治療は終わりになります。

根管治療 ーその2ー 根菅内にできた穴の修復


Step.1

穴が3カ所見えますが、両端の穴は神経の管の入り口ですが、中央の穴は間違って開けられたものです。出血が認められます。

Step.2

創傷部の消毒を行い、水酸化カルシウムで数日間、感染の除去を行います。

Step.3

再来院時に再度消毒を行い、止血していることを確認します。

Step.4

創傷部をMTAセメントで閉鎖します。

Step.5

その上をレジンで封鎖します。

このように感染の除去を行い、出血をコントロールすることによって、穴をきちんとふさぐことが出来れば、その予後はとても安定しています。

とかじ歯科医院院長:戸梶 仁聡のプロフィール写真

この記事の著者・監修者

院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)

歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。

資格・所属学会

  • 日本矯正歯科学会認定医
  • 歯学博士
  • 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
  • NCC認定カウンセラー
  • 日本矯正歯科学会
  • 日本歯周病学会
  • アメリカ歯周病学会

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