長引く根管治療の原因


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よく患者さんから相談を受ける内容に、「根管治療がなかなかうまくいかずにもう半年以上も治療をしているのですが、大丈夫でしょうか?」という質問があります。先日も以下のようなご質問をいただきました。このような状況で困っている患者さんは意外に多いようです。

QUESTION


去年11月から右下の一番奥の歯の根管治療をしていますが、いまだに良くなりません。

1月に一度ふたをして土台まで入れましたが、痛くてはずしてもらいました。それから再度根管治療を続けています。

薬を変えるたびに鎮痛剤を飲みたくなるくらいの痛みがあったので、6月からはマイルドな薬に変えてもらい、それからは症状も少し楽になりました。(それでも中で響くような痛みはありました)

根の中はきれいだとのことで、7月になりそろそろふたをしないと期間的にも限界と言われ、最終的には中を無菌状態にするためにFCという薬を使わなければならないということでした。そのため2回FCを使いましたところ、圧迫痛というか、また以前のように痛みがひどくなり耐えられず、またマイルドな薬に戻してもらいました。

今はまた痛みはわりと落ち着いています。今の先生は根の中はきれいだから、痛みは治まるはずだとおっしゃいます。

それでもやっぱり痛いので(ましな時でも最初から一貫して中で響くような痛みがあります)根の中がきれいでも痛みが続くということはあるのでしょうか。また原因として考えられることはありますか。

治療期間も長く、精神的にも身体的にも限界を感じ、どうすればよいかわかりません。

なるべく抜歯は避けたいですが「いっそ抜いてもらいたい」と思ってしまうこともあります。

この患者さんは月に1回の通院ではなく、毎週通院されていたというので私はびっくりしました。

さらにもう1本根管治療した歯も10ヶ月もかかったそうです。この方が治療に疲れてしまっていたのは無理もありません。


根の中がきれいでも痛みが続くということはあるのでしょうか


根管からの細菌除去が完了したことを判断する客観的手段は、残念ながら存在しません。

以前は細菌検査が有用な方法として信じられてきましたが、その信頼性には疑問があり、現在では限られた場合のみにしか行われていません。

したがって治療の成功は毎回の正確な感染のコントロールと根管の無菌化、確実な仮封、臨床症状の消失が得られているかどうかにかかっています。

根管内にいる細菌は嫌気性菌であり、通常の培養方法では検出出来ず、嫌気培養という方法が必要になります。

採取時に根管内の細菌を採取する際は、他の菌が紛れ込まないようにラバーダムをして、検査をする歯を清掃除菌して行うことが大切です。

目に見えないものを相手にするので、非常に検査が難しいです。

細菌が根の根尖孔から根の外側に広がっている場合は、根管内の清掃だけでは効果が少なかったり、限界があることがあります。

このような場合は、根の周りの病巣部に薬を効かせたり、外科的なアプローチが必要となります。


原因として考えられることはありますか


根管治療の目的は根管内に感染している細菌の除去ですが、このような相談を受ける患者さんはほぼ例外無く、根管治療時にラバーダムをつけて治療を受けていません。ラバーダムをつけずに治療すると、新たな口腔内にいる細菌の侵入を起こしてしまいます。

実はこれらの新たに感染した細菌は、元々根管に感染していた細菌より治療に対して高い抵抗性を示すものが多いことがわかっています。

つまり、感染のコントロールをしないで根管治療を行うと、かえって治りが悪くなり、治療に時間がかかってしまうのです。

同様に、不完全な仮封(根管治療している穴のかりの詰め物のこと)や膿を出すために穴を解放にしたままにしておくことも同様の結果を生んでしまいます。

感染のコントロールをせず、薬でどうにかしようというのは本末転倒だという話は以前にもしましたが、実は20世紀初頭はこのような考え方で治療されていました。この十数年の間に感染根管に対する治療は生体適合性の高い方法へと変わってきて、医療先進国では、毒性が最小限でアレルギーの原因となりにくい薬剤が使われています。FCのような強い薬をには、次のような問題点があることがその理由です。

  1. 強い薬は細菌に効果的ではあるが、根の周囲に漏出した場合は、健康な細胞や組織に重大な障害を与える。
  2. FCなどのホルムアルデヒド系のものは神経毒性を持ち、感覚に障害を与えたり、過敏な反応を引き起こす。
  3. 抗菌効果は炎症性侵出液により急速に不活性化されるので、抗菌効果自体は短期間で消失する。

治療が長引けば、度重なる根管治療によっていろいろな問題が起こりやすくなります。

細菌感染の起きる確立は高くなりますし、何度も根の中を削ることによって根尖(根の先)が破壊されると、そこから侵出液が入りやすくなり、薬の効果が下がったり、細菌に対する栄養供給が豊富になり、治りが悪くなります。

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とかじ歯科医院院長:戸梶 仁聡のプロフィール写真

この記事の著者・監修者

院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)

歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。

資格・所属学会

  • 日本矯正歯科学会認定医
  • 歯学博士
  • 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
  • NCC認定カウンセラー
  • 日本矯正歯科学会
  • 日本歯周病学会
  • アメリカ歯周病学会

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