この記事の著者・監修者
院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
資格・所属学会
- 日本矯正歯科学会認定医
- 歯学博士
- 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
- NCC認定カウンセラー
- 日本矯正歯科学会
- 日本歯周病学会
- アメリカ歯周病学会
当院には、根管治療がうまくいかなかったり、前医から抜歯を勧められて何とか抜かずに済まないかと悩んだ末にいらっしゃる患者さんが多くいます。
そのような方を拝見してみて感じたことは、根管治療時の感染のコントロールが不十分なことが原因で治っていないケースが結構あり、そのような場合は根管治療で残すことが出来るということです。
もちろん破折が根の深部まで及んでいたり、虫歯が非常に深くまで進行している場合や根管治療以外の問題(歯周病の合併など)があって残せない場合もあります。他の医院で抜歯と言われても、残せるもしくは延命出来る場合がありますので、抜歯してしまう前に一度ご相談いただければと思います。
左下前歯の歯茎が腫れている
左上の歯茎が腫れて、奥歯が自然に脱落した
左下前歯の歯茎が腫れている
左上の歯茎が腫れて、奥歯が自然に脱落した
患者様のご状況
主訴 | 歯ぐきが腫れている |
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経過 | 左下3番根尖性歯周炎、成人性歯周炎 |
年齢・性別 | 60歳・女性 |
抜歯部位 | 左上1番、右上4番6番 |
治療経過 | 歯周初期治療、根管治療、矯正治療>再評価>補綴治療 |
治療期間 | 約2年 |
治療費 | 約6万円 |
リスク | 根面カリエス、歯根破折、歯髄炎のリスク |
左上の5番が欠損しており、同部位の歯茎は大きく陥没している。
左上5番部の骨は大きく欠損しており、左下犬歯の根尖には病巣の影が認められる。
左上1番の内側の歯茎は腫れており、9mmの歯周ポケットが認められた。
また、右上4番には8〜11mm、6番には6〜10mmの歯周ポケットが認められた。
左下犬歯にはポケットは認められなかったが、根尖部付近の歯茎が腫脹しており、触診にて圧痛が認められた。
歯肉が腫れる原因には大きく、歯周病によるものと、歯根の病気によるものの2つに大別され、それぞれ治療対処の方法が異なる。
この患者さんは歯周病に罹患しており、臼歯部に深い歯周ポケットが認められる。脱落した左上の奥歯も恐らくは歯周病によるものと考えられる。これに対して左下3番には歯周ポケットは認められず、大きな根尖性歯周炎の病巣が認められるため、こちらは根管治療が必要となる。
この症例では、左上1番、右上4番6番は歯周病による骨破壊が根尖付近まで及んでいるため、保存は困難と判断し、抜歯を行った。その他の歯については歯周病治療として、ルートプレーニング(歯根表面の感染の除去)を行った。
左下3番は根尖病変と判断し、根管治療を行った。
左上2番は内側に入っていて、ブリッジの補綴治療時に問題となるため、舌側弧線装置にて唇側に移動して被蓋を改善させた。
再評価時、1箇所を除いて、すべての歯周ポケットは3mm以下となり、出血もほとんど認められなくなった。感染の除去が確認されたため、歯周治療を完了とし、ブリッジによる補綴治療を行ってメンテナンスに入った。
右上2から7、右上1から左上3、左上4から6をブリッジにて補綴治療行いました。将来的に義歯になる可能性があるので、患者さんの了解を得て、レストをあらかじめ設けてあります。
左下3番の根尖病巣はやや縮小傾向にあるものの、翌年再度歯肉の排膿出血が認められました。感染が根管内だけでなく、根の外側にも広がっていることが推測され、根管治療のみでは感染の除去ができないこと、歯根長も十分にあることなどから外科的に病巣と感染した歯根部分の除去手術を行うことにしました。
再度根管治療を行った後、外科手術的に3番の根尖病巣と同部に含まれていた歯根部分を切除し、露出した根管部分にMTAセメントを充填しました。約1年後のレントゲンでは骨の再生が認められ、病巣は消失しています。
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
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