歯周病治療


歯周病で悩まれている方へ


歯周病の治療がなかなかうまく行かず、徐々に歯を失って困って当院へ来院される患者さんが多くいらっしゃいます。もう入れ歯しかないと言われてなかばあきらめている患者さんもいます。歯周病は歯周病菌が歯周ポケット内に感染して始まる病気です。ですから、歯周病の治療は歯ぐきの中や歯の根に感染した細菌や歯石を取り除くことがメインの目的です。

良くならない患者さんの多くがきちんとした治療をしてもらっていません。進行した歯周病の治療は、歯ぐきの内部深くに感染している細菌や歯石を取り除くことが必要ですが、歯ぐきの上の部分の掃除しか受けていないのです。私のところで歯ぐきの中の歯石をとった患者さんは、今までと全然違うと驚かれます。

歯石は根の表面にこびりついていますので、刃物で削り取らないと取り除くことはできません。薬用歯磨きでいくらブラッシングしても、一時的に症状がおさまるだけで治ることはありません。歯周病が軽度であれば、超音波スケーラーなどで清掃することで治すことが出来ますが、進行している場合は麻酔をして十分な時間をかけて清掃しないと治りません。根の形態は一人ひとり異なり複雑です。トレーニングをつんだ人が時間をかけてやってはじめて、歯周病は治っていきます。いろいろなところで、GTRやエムドゲイン、薬で治す方法が紹介されていますが基本は感染の除去です。これを怠れば、いくら最先端の治療法を使ったとしても効果がありません。

GTRやエムドゲインはスウェーデンで開発された技術です。私はその本場に行って開発した人たちに会ってきましたが、彼らが臨床で行っていたことはきちんと感染の除去をすることでした。歯周病治療で大事なのは歯石を取ったり、プラークを除去したりといった感染の除去が9割で、GTRやエムドゲインはのこりの1割、おまけみたいなものだったのです。

プロービングについて


歯周病の検査でもっとも大切なのが、プロービングです。プロービングに用いる道具は、プローブといって、直径0.5~1mmほどの細いミリ単位の目盛りのついた細い金属棒です。これを歯と歯ぐきの境目にある溝の中にそおっと入れて、溝の深さを測ります。測定時に痛みを感じることはほとんどありませんが、歯肉炎がある場合は出血が認められます。

健康な歯ぐきでは、ポケット(溝)の深さは3mm以下です。

1歯1歯の歯の周囲をぐるりと測っていくことによっ て、周囲の骨の状態を把握することが出来ます。

歯周病の治療前に検査をすることによってどのような治療が必要になるのかがわかりますし、治療前後の変化を見ることで治療の効果がどれくらいあったのかがわかります。

特殊なプローブとして大臼歯の根の分岐部の状態を調べるファーケーションプローブというものがあり、中~重度の歯周病の患者さんの場合に使います。

歯周病の基礎知識


歯周病の進行について


歯周病は歯と歯ぐきのさかい目の歯肉溝という溝から、細菌が歯周組織内に侵入して起きる病気です。歯周病は、歯肉炎という炎症が歯ぐきの部分だけに限局した状態から始まります。歯周組織は歯と異なり、免疫による防御反応が起こります。

そのため免疫機構に先天的な問題がない限り、若い人の場合は歯周炎までは進行しません。しかし、40代後半くらいから、免疫の力が低下し細菌の侵入を許し、歯周炎へと進行していきます。

歯周病の進行の様子


歯槽骨の吸収が根の長さの1/3以下を軽度歯周炎・1/3~2/3までを中等度歯周炎・2/3以上を重度歯周炎と呼んでいます。

歯根の表面に細菌によって作られた歯石は、それ自体は毒性はないのですが、歯ブラシでは取り除くことが出来ず、この表面にたくさんの細菌が住み着くため、歯周病の原因となっています。細菌は歯石を足場にさらに深部に侵入していき、 最終的には支えている歯槽骨が無くなり、歯は動揺して噛めなくなり、抜けてしまいます。

歯周病の怖いところは、虫歯と違って自覚症状がほとんどないことです。口臭、歯ぐきからの出血、歯ぐきがやせてくるなどが主な症状で、通常痛みを伴わないため、自覚されにくい病気です。痛みが出たり、ぐらぐらして噛めないという症状が出たときは、かなり進行していて重度になっていることがほとんどです。そして虫歯と違って、多くの歯が一度に罹患するために、多くの歯が失われることになります。

歯周病の臨床所見


健康な歯ぐきは、薄いピンク色をしていて、表面にスティプリングという非常に小さな凹みが点状に認められます。

これは、歯ぐきの中にあるコラーゲン繊維の 付着部位を表しており、歯ぐきが健康で引き締まっていることを示しています。

歯と歯ぐきの境目には、溝(歯肉溝:ポケットとも言う)があり、健康な状態の歯ぐきでは、ポケットの深さは1~3mmです。

ポケット底から下の歯ぐきの上皮部分は、接着斑(ヘミデスモゾーム)と呼ばれるものでシールのように、歯のエナメル質にくっついています。このことによって細菌や異物が体内に侵入するのを防いでいます。

歯肉炎について


歯周病の初期の状態は、歯肉炎からはじまります。研究によると、適切なプラークコントロールをやめてから、3~4日ほどで歯肉炎が認められるようになります。

プラークは次第に量を増し、内部では嫌気性菌といって酸素の嫌いな菌が増えていきます。この嫌気性菌に歯周病原因菌は属しており、これらの細菌が歯周ポケットの内部に入り込んでいくことで、歯肉炎が起きてきます。

歯肉炎の特徴

  • 歯肉に限局した炎症で、ポケットは4~5mm程度。
  • レントゲン所見では、骨の破壊が認められない。
  • 通常20~30歳代の若年者にみられる。

歯肉炎について


歯肉に炎症が無くても、歯槽骨の破壊と4mm以上のポケットが存在があれば、歯周病と診断されます。歯周病がかなり進行すると、歯ぐきがやせてきて、歯が長く見えるようになります。

歯槽骨の吸収により、歯はかむ力を支えることができなくなり、動揺や位置の変化を来し、右下の写真のように前歯の間に隙間ができてきます。

歯周炎の特徴

  • 外見では歯肉炎が認められなくても、4mm以上のポケットが存在する。
  • レントゲン所見で、骨の破壊が認められる。
  • 通常40歳代後半過ぎの者にみられる。

歯周病の治療


原則として歯周病の治療に必要な処置には次の3つがあります。

1.歯根の表面についている歯石やプラーク(細菌)といった感染源の除去。

2. 再感染防止のためのプラークコントロール方法の習得。

3. 明らかに保存不可能な歯の抜歯

12の治療がうまくいってはじめて歯周病の進行を止めることができます。

したがって、患者さんに正しい歯周病の知識を持っていただき、正しいプラークコントロール方法を習得していただくことが大変重要です。

3については、出来る限り歯を残していきたいのですが、無理して残すことでその歯が歯周病の再発を引き起こす感染源になる恐れがあります。ここのところの判断が治療の結果を左右する重要なポイントになります。残せる可能性のある歯は基本治療を行った結果で判断していきます。

歯周治療は基本治療と確定治療の2段階に分けて行われます。

Step1

基本治療


まずはじめに、ダメージの少ない非外科的治療を行います。

歯ぐきに麻酔をした後、写真に示したスケーラーという器具を用いて歯根の表面についている感染源を丹念に削り取っていきます。(SRP:スケーリング&ルートプレーニング)

スケーラーの先端は歯石を削り取ることが出来るように刃物になっています。(拡大写真参照)

歯根の形や本数、長さは個人個人で違っており、レントゲン写真をたよりにこれを手探りで行わなければならないため、ポケットの深い重度のケースほど熟練と根気のいる治療になります。特に根が複数に分かれている奥歯は時間もかかり、歯石を完全に除去することが難しくなります。

Step2

確定治療


第1段階が終わると再評価をして、どれくらい歯周病がよくなったか調べます。その結果問題が残ったところについて再度同じ非外科治療を行うか、歯周外科治療をするか、あるいは抜歯するかを決めます。

歯周外科治療は歯ぐきを開けて歯根を露出させた状態で、感染源を除去するので確実に取り除くことが出来ます。治療後のお手入れのことを考えて、歯槽骨の形を整形したり歯根の形態を修正したりすることもあります。

歯周病患者の補綴治療


重度の歯周病患者さんの多くは歯を支えている歯槽骨が著しく失われてしまうため、咬合力(かむ力)を支えることが出来ずに歯並びが崩れてしまいます(咬合崩壊)。

歯周病は奥歯から進行することが多く、奥歯が咬合力に耐えられなくなって倒れてきたり、あるいは抜けてしまったりして、かみ合わせの高さが低くなります (咬合高径の低下)。すると上の前歯が下の前歯から突き上げられるようになり、上の前歯が前へ押し出されて前歯の間に隙間が出来てきます(フレアーアウト)。

そのため多くの場合は、矯正治療を行ってかみ合わせを改善する必要があります。しかしながら歯周病が治っても、失われた歯槽骨は元の状態には戻りませんので矯正治療後に歯を固定してやらないと再び咬合崩壊を来してしまいます。

固定方法には、ブリッジ(連結したクラウン)を入れる方法と接着剤で止める方法があります。

歯周病治療例集


『症例1』36歳女性


前医から歯周病は磨くしかないといわれて、プラークコントロールを一生懸命してきたが、ここ5年くらいで前歯の歯茎がやせて歯の動揺がひどくなってきたため、来院された。

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『症例2』51歳女性


歯周病を気にして、プラークコントロールを一生懸命されているため、歯肉の炎症はそれほど目立たないが、歯肉縁下についている歯石などの感 染源の除去がされていないため、歯周病の進行は止まらず、咬合崩壊により上の前歯がフレアーアウトして隙間が出来ている。

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『症例3』56歳男性


1年前に、それぞれ自然に脱落。歯がぐらぐらして、物がかめない。数年前より、歯周病の自覚はあったが、歯を全部失うのでは、という恐怖から、なかなか来院できなかった。

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『症例4』55歳女性


55歳の女性。右上の小臼歯部の歯ぐきがはれて痛むため来院。歯がぐらぐらして、物がかめないため、歯周病が原因と思って来院されたが、根尖病変の悪化によるものであった。緊急治療として、右上のブリッジを除去して、4番の根管治療を行い、炎症がおさまったときの口腔内写真。

以前、左下の欠損部には義歯を作ったが、違和感が強く入れてられなかった。左上の犬歯から大臼歯部にかけては、対合歯がないために下方に挺出している。

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『症例5』58歳女性


58歳の女性。左上の6番がぐらぐらして、痛くて咬めないとの事で来院された。右上の6番7番の大臼歯はすでに歯周病で失われており、部分床義歯を作ったが、違和感と痛みのためはめておくことが出来ず、使っていない。そのため、主に左側で咬んでいたが、今回左上の6番が痛くなり、食事が出来なくなってしまった。

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とかじ歯科医院院長:戸梶 仁聡のプロフィール写真

この記事の著者・監修者

院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)

歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。

資格・所属学会

  • 日本矯正歯科学会認定医
  • 歯学博士
  • 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
  • NCC認定カウンセラー
  • 日本矯正歯科学会
  • 日本歯周病学会
  • アメリカ歯周病学会

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