この記事の著者・監修者
院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
資格・所属学会
- 日本矯正歯科学会認定医
- 歯学博士
- 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
- NCC認定カウンセラー
- 日本矯正歯科学会
- 日本歯周病学会
- アメリカ歯周病学会
歯科で用いられている材料には様々な物があり、新しい材料が次々と開発されてきています。その新材料の開発によって歯科治療は発展し、変わってきました。
材料の特性を理解するためには素材別に分類してその特徴を知ることが早道です。
どのような歯科材料であっても、素材別に分類してみると以下の4つのグループに集約出来ます。
金合金、銀合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ステンレス合金
石膏、埋没剤、陶材、セメント
印象材、ワックス、床用レジン
コンポジットレジン、硬質レジン
それぞれについて解説していきます。
金属は金属結合でくっついているため硬くて丈夫です。金属結合の特徴として、金属原子の間に自由に動ける自由電子があり、これにより金属には電気が流れる性質があります。
この電子は緑色より短い波長の青や紫の光を吸収するため、反射光は波長の長い黄、橙、赤、赤紫の光からなり、これが金属色を作っているのです。(詳しくはこちらを参考に)ですので、本物の歯と同じような色の金属を作ることは出来ません。
自然界にほとんどの金属は金属酸化物という無機化合物の状態で存在しています。例外は貴金属と呼ばれる金、銀、白金、パラジウムです。これらは単体で存在が可能です。
これは逆に貴金属の方が口腔内で腐食しにくく、安定していることの説明になっています。
保険で一般に使われている金属は金銀パラジウム合金で、主成分は銀になるので銀合金に属します。銀合金は経年的に黒ずんでくることがあります。銀が黒ずむのは酸化でさびたためではなく、空気中の硫黄と反応して黒くなるのだそうです(硫化といいます)。口臭の主成分であるメルカプタンは硫黄化合物であり、これにより銀が黒くなることがあります。金やパラジウムには硫化反応を抑える作用があります。
卑金属には鉄、コバルト、クロム、ニッケル、チタンなどがあります。これらの金属は自然界に単体で存在することが出来ず、酸素と反応した酸化物として存在しています。
金合金 … 詰め物(インレー)、かぶせ物(オンレー、クラウン)、金属床義歯など
銀合金 … 詰め物(インレー)、かぶせ物(オンレー、クラウン)、メタルコア、義歯のバネ部分など
コバルトクロム合金 … 義歯のフレーム、バネ部分など
ニッケルクロム合金 … 義歯のフレーム、バネ部分など
チタン合金 … インプラント
ステンレス合金 … 矯正装置
無機材料はイオン結合で出来ている材料です。一番よく知られているのが塩です。
この図のように、Naの陽イオンとClの陰イオンが結合して出来ています。
+とーは引き合いますが、同じ符号同士は反発し合っています。
このため、この格子構造は変形させることが難しく、この構造を破壊するほどの力を加えると割れるようにして壊れます。
石膏(CaSO4)も塩と同じ構造をしていますので、同様の性質を持っています。
イオン結合は強力な結合なので、無機材料は硬いけれども、脆い性質があります。
歯科で使われる無機材料には以下のような物があります。
歯型の模型材として使われます。
金属を溶かして流し込む鋳型材として使われます。
金属に代わり、白い歯を再現するのに使われます。
欠損部を埋めたり、接着剤として用いられます。
有機材料は共有結合で出来ている材料です。これは、電子を他の原子同士が”共有”して出来上がる結合のためそう呼ばれています。
有機材料は共有結合による化学反応によって形状や物性が変化するので、自由な加工が可能であり比較的柔らかい素材が多いです。
歯科材料としては、印象材やワックス、義歯用レジン等に使われています。レジンとはプラスチック樹脂のようなものと考えてください。
複合材料は2種類以上の材料を”複合”させた材料です。歯科用コンポジットレジンは、有機材料の柔らかくて形を付与しやすいレジンに、硬い無機材料であるガラスのフィラー(粒子)を混ぜて強度をもたせた複合材料です。
レジンは吸水性があり、固まるときに重合収縮がおこり体積が小さくなってしまう欠点がありましたが、ガラスを混ぜることで吸水性と重合収縮を改善し、効果強度を上げた理想的材料になりました。
ハイブリッドセラミックスはレジンにセラミックスのフィラーを加えて、強度をさらに上げた複合材料です。
コンポジットレジンとセラミックの中間くらいの強度と考えてください。
歯科材料は硬ければ良いというものではありません。詰め物の場合はくさびとなって、歯を割ってしまう原因になってしまいます。
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
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