この記事の著者・監修者
院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
資格・所属学会
- 日本矯正歯科学会認定医
- 歯学博士
- 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
- NCC認定カウンセラー
- 日本矯正歯科学会
- 日本歯周病学会
- アメリカ歯周病学会
マイクロスコープを用いての治療は自費診療になり、1時間1万円前後になります。(詳しい治療費についてはこちらをご覧ください。)
治療回数は歯の状況によって異なりますが、私のところでは、通常の根管治療にかかる回数は2~3回ですが、こじれていて状態が悪い場合、破折や穿孔などの問題がある場合はさらに治療回数が増えることがあります。
治療時間は1回1時間が基本ですが、初回は土台や仮歯を作ったりするので2時間必要なことが多いです。根管治療後の補綴にかかる回数は土台制作に1回、型取りとセットで2回必要になります。治療完了までは1ヶ月半〜2ヶ月ほどお時間をみていただくことになります。補綴治療も自費診療になりますので、被せ物の種類によって変わりますが、トータル1本あたり15−20万円ほどかかります。
細菌感染から受けた神経のダメージが回復するのは障害が軽微なときに限られ、痛みが取れても徐々に神経は石灰化し死んでいきます。
はじめは冷たい物がしみていますが、神経の状態が悪くなり回復の見込みが無くなると、熱いものがしみるようになります。
そして、歯髄炎から根尖性歯周炎へと病態が変化していきます。
石灰化して細くなった根管の治療は非常に難しいです。
根管治療の専門医が治療した場合の成功率は、歯髄炎では95%ですが、根尖性歯周炎では60%まで落ちてしまいます。
したがって、神経を無理に残すと、かえってこじれて治療の予後が悪くなることがあります。
私はこのあたりを考慮して神経を残すかどうかを判断しています。
マイクロスコープを使うことによって、より詳しく正確に状況を判断することは可能ですが、現代の医療技術では、割れた根を一時的に接着することは出来ても、それをずっと維持させていくことは出来ません。
歯は噛むという機能をするためのものですので、何十キロという咬合力がかかれば、接着ははがれてきます。
問題は破折ラインにそって感染が起こることで、これにより骨が無くなり、歯ぐきが腫れてきます。
しかしながら、破折が歯冠部もしくは根尖部に限局している場合は、感染がおこらずに保存することが可能な場合があります。
痛みの原因は細菌感染による炎症によって起こるものがほとんどです。
根管治療において、顕微鏡以上に大切なのはラバーダムです。
これをきちんと使用し、新たな感染を防いで治療すれば、治療後に痛みが出ることは根尖病巣が急性化する場合を除いてほとんどありません。
根管治療の際は状態の確認のために、歯のレントゲン写真(デンタル)を数回撮らせていただいています。
私たちは日常生活の中で常に自然放射線と呼ばれている微量の放射線にさらさられています。これを自然被爆と呼びます。
この値は年間に2.4ミリシーベルトであり、これと比較して、デンタル1枚のレントゲン線量は0.02~0.04ミリシーベルト、セファロは0.01~0.03ミリシーベルトです。
妊婦が放射線に被曝した場合、胎児へ奇形等の影響を発生する1回の検査あたりの放射線量の最低ライン(「しきい値」と呼ばれます)は100~200ミリシーベルトであると考えられています。
放射線を短期間に全身被曝した場合の致死線量は、5%致死線量が2000ミリシーベルト、50%致死線量 (LD50) が4000ミリシーベルト、100%致死線量が7000ミリシーベルトと言われています。
通常200ミリシーベルト以下の急性被曝では、臨床的症状は認められていません。
不必要な放射線は浴びないに超したことはありませんが、撮らないことによって誤った診断をしてしまったり、治療しないことの方が問題が大きいのではないでしょうか。
神経の治療をした奥歯をたたくと響き、痛みが続いているとのことですが、原因としてはいくつか考えられます。
1. 神経が一部残っている。
2. 消毒の薬によって根っこのまわりが刺激され、かえって痛みが出ている。
3. 根の治療の際に、根の先の部分を破壊してしまっている。
4. かみ合わせが悪く、その歯に過度の力がかかっている。
5. 歯の根にヒビが入っている。
6. 根管内に感染しているバイ菌が除去出来ていない。
通常、ラバーダムをきちんと使用して感染のコントロールをしていれば、神経の治療に何ヶ月もかかることはありません。
治療が長引けば、それだけ再感染の機会が増えることになり、病状がこじれて治りにくくなる可能性が出てきます。
マイクロスコープはここ10年くらいで広まってきた器具なのでまだ一般的ではありませんが、その有効性を考えると今後はこれが根管治療のスタンダードになっていくものと思われます。
一方、ラバーダムは昔からあり、他の先進国では根管治療におけるスタンダードになっているにも関わらず、ラバーダムの重要性をまだ日本の歯科医師の多くが認識しておらず、使われていません。そのため残念ながら日本の根管治療の成績は、前時代的なやり方の後進国と同じままです。
根管治療に行く度に痛みがあるのは、そういうレベルの治療に原因があると思われます。
例えマイクロスコープが無くても、ラバーダムによる感染のコントロールをきちんと行い、時間をかけて治療してくれる医院にかかることをお勧めします。私の医院では、患者さんが治療に不安があるようでしたら、治療途中であっても拝見いたします。
痛みを引き起こさないためにも、ラバーダムとマイクロスコープを用いて感染や根管の見逃しや破壊を防ぐことは非常に大切ですが、すでに痛みが起きている場合はその原因によって結果が異なります。
神経が残っている場合は、神経を除去すればすぐに痛みは落ち着きます。根管が複数あり、その一部を見落としている場合も同様です。
感染が根管内から根の周りに広がってそれが原因で痛みが出ている場合は、根管治療によって感染を取り除くことが出来ないので、抗生物質などの内服を飲んでいただくことになります。その場合は薬が効くまで2~3日かかりますので、その間は痛みが続きます。
根管治療後の痛みの原因について
神経をとる処置をした後に痛みを生じることはよくありますが、下の奥歯の場合、ごく稀に下唇から顎にかけて知覚麻痺が生じることがあります。知覚神経障害がおこる原因としては以下のことが考えられます。
1)麻酔(特に伝達麻酔)をした際に針が神経(下歯槽神経)を損傷した。
2)抜髄時に器具が根尖孔外に出て、神経を損傷した。
3)根管治療後、根尖部で炎症が生じ、出血、浮腫、化膿することにより下歯槽神経を圧迫した。
4)根尖部に生じた炎症が下歯槽神経に波及した。
5)根管に貼薬した根管治療薬が根尖孔から漏出して、神経を損傷した。
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
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