この記事の著者・監修者
院長:戸梶 仁聡(とかじ ひろあき)
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
資格・所属学会
- 日本矯正歯科学会認定医
- 歯学博士
- 上智大学カウンセリング研究所認定カウンセラー
- NCC認定カウンセラー
- 日本矯正歯科学会
- 日本歯周病学会
- アメリカ歯周病学会
歯の痛みが長期にわたったり痛みがひどくなると、どの歯が痛いのかわからなくなることがしばしばあります。私たち歯科医師はそのような患者さんが来院されたときに、それまでの経過を詳しくお聞きする問診、実際にお口の中を見る視診、原因と思われる歯をたたいてひびくかどうかを調べる打診、冷たい氷や熱いお湯などをかけて反応を見る温度診、レントゲン検査など、いろいろな検査をすることで、痛みの原因となっている歯を特定していきます。
それでもなお、原因となるような所見が認められず、どの歯が悪いのか特定出来ないことがあります。今回ご紹介するケースは、マイクロスコープによって原因が特定出来た症例です。
10日ほど前から右上の奥歯がしみて痛むようになりました。自宅の近くの歯科医院で診てもらいましたが、虫歯ではなく知覚過敏だから様子を見るように言われました。しかし、しみるのがだんだんひどくなり今は右側ではかめません。冷たいものだけでなく、熱いものもしみるようになってきました。
右上にはインレーが入っていますが、虫歯の所見は視診、レントゲンともに認められません。打診、温度診ともに不明瞭です。
下顎にもインレーが入っており、右下7のみはっきりと打診が認められ、インレー下にわずかに透過像が認められました。
右下7番遠心部歯質の破折から生じた歯髄炎。
マイクロスコープにより破折線を発見、インレーを除去したところ空間があり、インレーが咬合力により食い込んで破折を来したものと考えられます。
咬合力が強い人の場合、インレーの金属がくさびの役目を果たして、歯が割れることはしばしば臨床で経験されます。
写真はReit先生たちの書かれた「Textbook of Endodontology」より引用しています。
・イエテボリ大学歯内療法科訪問記(その1)(タイトルクリックで内容表示)
3ヶ月前より右上臼歯部に咬合痛がありました。3日前より痛みが強くなり、右側ではものがかめません。冷水や温水では痛みはでないが、食事をすると痛くなります。
右上にはインレーが入っています。レントゲンや視診により特に虫歯は認められません。6番に強い打診痛があります。
右上6番近心面歯質の破折から生じた歯髄炎
マイクロスコープ下で 右上6番インレーを除去したところ、歯髄へ及ぶ破折線を発見しました。
インレーがかなり大きく、咬合により破折を来したものと考えられます。
写真の矢印は破折線を示します。破折している歯質を保護するためにテンポラリークラウンを作り根管治療を行っています。
生活歯におこる初期の破折は肉眼だけでは発見することが難しく、マイクロスコープで詳細に観察することで、発見出来ることがあります。歯の痛みとなるような明らかな原因が認められない場合には破折を疑い、マイクロスコープで観察することが有効だと思われます。
歯科医師になって30数年間、自分の理想とする【患者さんのための歯医者】を求め続けてここまでやってきました。
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